
一次史料読解→現地調査を基本とする館長・石黒隆一の調査研究方法
「石黒八右衛門家資料室」で基本とした「会津藩家世実紀」や城下絵図などの一次史料を調査し、現地を歩きながら先祖の事蹟を確認する私の調査研究方法は、ライフワーク的に取り組んできた「北海道の近世発展を支えたニシン肥料の生産と北前船による消費知恵の出荷」で身に付けました。ここで紹介する調査研究の方法は、現在「石黒八右衛門家史料館」の展示制作にもそのまま生かしています。以下では、その基礎となった北海道近代漁業史研究を例に紹介します。



拙著「宝船」では、北海道近世漁業史の転換点「石狩改革」を取り上げています。この事例のように必要な一次史料は、筆文字で書かれていることが多く、大きな障壁になりがちです。2つの克服方法を紹介します。
① 書き下しを探す。
・国会図書館デジタルコレクションで必要資料を探す。
・公立図書館や資料館、地方公共団体の発刊物(市町村史などを探す)


上記「安政五午年 石狩改革一件」は「札幌市史第六巻・資料編の69~71ページに、全文が掲載されていました。これで、1次史料の内容が確認できるので、筆文字の解読にすすむ必要が回避できました。このような例は、比較的多く、「石黒八右衛門家史料館」でも、尾張藩士林泝徊は、名古屋市教委解読による「山川書房版」が国会図書館デジタルコレクションに、収蔵公開されたため、内容を活字で読むことができました。
② 1次史料へのアプローチ



活字(テキスト)で抵抗を感じた時は、高校の古典教科書に戻ると理解が進む。文書資料分析を楽しむ方法も有意義。筆文字読み取りが必要な時はAIによる解読支援「みんなで翻刻」を利用することも、可能になってきています。
①協力者を探そう。
調査したい歴史事象の道案内をしてくれるのは、何といってもその土地を知る人です。


「宝船」執筆にあたってフェリーと自家用車による日本半周の行程の西端調査地として岡山県倉敷市・下津井地区を訪問しました。

『明治十年代初頭の北海道貿易』山口和雄著に記された「北海道よりの移入品割合」と「北海道への移出品割合」(筆者着色)で、北海道よりの移入品に、瀬戸内の割合が80.9%を占めています。内訳は、ニシン〆粕と胴ニシンの肥料が圧倒、北前船時代に積荷移出品として「魚肥」が重要だったことを物語っています。
「鉱工業製品と農産物の生産が未発達だった明治初期に瀬戸内という巨大な消費地があったことが北海道の発展を支えてくれた」その事情を現地調査で探ることが、「宝船」執筆にあたっての大切な目的でした。当時、日本遺産に「北前船寄港地・船主集落」が認定され、各地で小学生を対象に北前船の歴史と地域における意義を伝えるプログラムが実施されました。石狩市の担当が私、倉敷市の担当が「むかし下津井回船問屋」館長をされていた矢吹さんでした。


現地調査で分かること
この時「魚肥・ニシン粕を必要とした干拓地の状況は」現地(吉備の穴海)を見ない限り、把握できなかったと実感しました。
歴史記録である文献・一次史料を読まなくては何も始まらないけれど、その意義を検証し理解するためには、現地の風土や地形などを感じることが不可欠。さらに、その地域の研究者の知見に学ぶことが、自分の成長の源泉であり、一連の成果が研究の喜びであると実感しました。
『石黒八右衛門家史料館』で、調査・研究の対象が「自家祖先の歴史」に代わっても、一次史料を土台に、実地調査などを通して、歴史事象を探求する私の基本姿勢に変化はありません。この後は名古屋静岡での調査を実施し、新たな段階に進んでいくことを願っています。
